トップジュニアを育てるなら、指導者の知識と経験も必要だ。「チームサテライト」には元デ杯代表を務めた太田茂代表の他に、錦織圭のトレーナーを6年間務めた中尾公一トレーナー、全日本学生テニス選手権大会(インカレ)優勝経験を持つ近藤大基コーチといった有能なスタッフが脇を固める。今回は、2人のジュニア指導についての考えを聞いた。

中尾氏は、講師として訪れていた、ダンロップ・ジュニアキャンプで太田氏と知り合ったことがきっかけで、チームサテライトのジュニアトップチームでフィジカルトレーニングを週2回行っている。

この起用について太田氏は「自分自身、多少のトレーニング知識はあっても、専門家ではありません。その点で力を貸してしてほしかったことと、何より錦織選手のサポートを6年間していた経験、世界基準を見てきたことを、直接指導受けてもらうことによって、選手の目標達成に寄与していただける」ことを理由に挙げる。

かつてサポートにあたった鈴木貴男、錦織圭らプロ選手と、ジュニア選手の指導においての違いを中尾氏は、「プロならある程度できることが、ジュニアだとできないことがある。それをできるように身体作りをしていくこと」と言い、根本となる土台を作りをメインとしている。

例えばスキップができないジュニアをできるようにしたり、ボール投げをうまくできるようにする指導に始まり、基本的なウォーミングアップ、クールダウンの仕方も伝える。

錦織のサポートを6年間務めた中尾公一トレーナー

「ジュニアは試合も多いので、ボールを打っていた方が勝ちやすくはなるでしょう。でも、その先のことを考えると、プロの世界では、むしろフィジカルの方が重要になる。最後は体力勝負で勝てたとか、故障のしにくい体を、ジュニア時代から作っておく必要があります」

また、トレーニングはつらいとか、苦しいとかいった感情がつきものだが、その点については、その目的を伝え、なるべく“楽しさ”を作りながら、メニューを考える。

「このステップはこの動きに使うよね、ということを説明し、3段階ぐらいに分けてトレーニングメニューを考えています。最初に普通に走らせ、その次に走った後、メディシンボールを投げさせる、最後はラケットを振るといったような段階を踏んでいます。トレーニングとテニスがどう繋がるかが理解できると、モチベーションも上がります。また、楽しませるために競わせたりしながら、同じメニューはほとんどやらないよう工夫もしています」

フィジカルトレーニングの積み重ねは最終的には「自信」へと繋がる。選手の個性と体の状況を見極めての指導は、世界4位、グランドスラム決勝、ATPファイナルといった現場経験の豊富さが成せる技だ。

近藤氏は、トップジュニア時代を経て、慶應義塾大学時代にインカレ優勝、伊予銀行、保険会社の営業を経験し、自らスポーツのイベント会社を立ち上げた。その仕事と並行して、ジュニア統括コーチを務めている。

「私の指導方針を理解して取り組んでもらうことができる」と、太田氏は大きな信頼を寄せている。

実際近藤氏も「太田さんは選手のフォームを作り上げることに長けていて、すごく細かいところまで指導するし、少しでもフォームが崩れていたらすぐ修正します。だから僕としては選手の目標に合わせたモチベートや、メンタル面、生活面といったところを話し合い指導しています」と、自分の役割を理解し指導にあたっている。

インカレ優勝経験を持つ近藤大基コーチ

プロが目標なのか、大学でテニスをすることが目標なのか、あらかじめ選手からリサーチをしてテニスに取り組むが、各々に合ったアドバイスをするには、ジュニアたちの心境を読むことも必要だという。

「例えば太田さんからの指導を理解していないな、と思ったら、さらに説明することもあります。プロを目指しているのに、練習で抜いたりしていたら指摘しますし、生活態度においても話します。今は、アドバイスを積極的に求めたり、わからないことを自ら聞いたりするジュニアはあまりいません。だからわかっていないまま進めてしまうと、結局上達が遅くなります」

また、アドバイスにおいても、自らの社会人経験を生かして伝えることも多い。

「やはりまだ子どもなので、練習中にちょっとくさっちゃったり、テンションが上がらなかったりすることもあるのですが、そういうところを『社会人になったら通用しないぞ』と言うと、ただ頑張れと言うより、少し変わったりします。テニスではなくて、人間的なとか、社会から見たら…といったアドバイスするように心がけています」

自分に何が足りないのか、だから何をしなければいけないのかということを、テニスを通じて学ぶこと。真剣な取り組みは必ずジュニアの糧となる。

太田氏の徹底した技術と戦術指導を支える、中尾氏の身体作り、近藤氏のモチベートによって、チームサテライトのジュニア選手たちは、さらなる高みを目指している。

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